上野殿御返事 第三章

上野殿御返事 身子という人は仏ろうと誓願して、六十こうという長い間菩薩の行を積み重ねたが、堪えられず退転して、二乗の道に堕ちたのである。また、大通智勝仏の第十六王子によって法華経の緑を結んだ者は、退転して三千人転こうという長い間、また、久遠に法華経の下種を受けた者は、五百じんてんこうというきわめて長い間、生死の大海に沈んだのである。これらの者は、法華経を修行していた時に、第六天の魔王が国主等の身に入って、さまざまに障りをなしたので、退転して、法華経を捨て、長い間、六道を輪りんしたのである。